文献レビューの書き方:書く前に、まず探し尽くす
文献レビューを書く作業は、突き詰めると三つです。自分の問いに関係する文献を漏れなく見つけること。論文をグループに分けて比較し、その分野がどう構成されているかが見えるまで読むこと。そして、その分野についての自分の判断、つまりレビューの論旨を書くことです。最初の二つがレビューの下限を決め、三つ目が上限を決めます。このガイドではこの順に、各ステップに実例を添えて説明します。
文献レビューの書き方を解説した記事はたくさんあり、手順はおおむね共通しています。問いを決める、データベースを検索する、文献を評価する、テーマを見つける、構成を考える、書く、推敲する。ひととおり読んでみて、それらには共通する問題が二つあると感じました。一つは、検索のステップがほぼ必ず「関連するデータベースを検索する」の一文で済まされていることです。レビューは見つけたものについてしか論じられないので、Google Scholar の1ページ目で止まった検索からは、1ページ目のレビューしか生まれません。もう一つは、書く部分が「要約ではなく統合せよ」という一言に縮んでいることが多く、どう統合するのか、レビューの論旨はどこから来るのか、論文同士が矛盾しているときにどうするのかには、ほとんど触れられていないことです。
このガイドでは、その両端を埋めたいと思います。私が Parallax を作り始めたきっかけは検索でした。汎用エージェントは検索 API から上位 k 件しか受け取れず、あるテーマに論文が何本あるのかを答えられません。そこで arXiv 全体をスキャンする仕組みを作りました。ただ、作ってみてはっきりしたのは、すべてを見つけてもレビューの下限が決まるだけだということです。上限を決めるのは、やはり書き方です。そこで以下は「探す」「読む」「書く」の三部構成とし、「書く」にいちばん紙幅を割きます。想定している読者は、物理、数学、コンピュータサイエンス、統計、定量生物学、経済学など、プレプリントを日常的に扱う人です。
文献レビューの種類:自分が書くのはどれか
文献レビューは、既存の研究を列挙するのではなく、比較することで問いに答えるものです。その形は、どこに載るかで変わります。論文の関連研究(related work)の節は、数段落で自分の研究を既存研究の中に位置づけます。学位論文のレビュー章は、分野を構造立てて整理し、最後に自分の研究課題へとつなげます。独立したサーベイ論文はさらに大きく、arXiv のコンピュータサイエンスや物理の分野ではごく一般的です。医学や社会科学には、検索とスクリーニングの手順を事前に登録し、各段階の件数を報告するシステマティックレビューや、個々の研究の質は評価せずに何があるかを整理するスコーピングレビューもあります。以下の方法はそのどれにも使えます。違うのは規模と、手順をどこまで正式に書き残すかです。
文献の探し方:漏れなく見つけたと確かめる
問いと範囲を、他人が確かめられる文で書く
検索の前に、レビューが答える問いと、何を含め何を含めないかを書き出します。確かめ方は、その文を渡された別の人が、ある論文をあなたと同じように仕分けられるかどうかです。「LLM エージェントの記憶に関する論文」では曖昧すぎます。「LLM ベースのエージェントがステップやセッションをまたいで情報を保存・検索する方法を提案、評価、分析した論文を含める。エージェント設定のない KV キャッシュ圧縮の研究は除く」と書けば、判断の拠り所になります。期間と情報源も同時に決め、2020年以降の arXiv だけを対象にするなら、レビューの中でそう明記します。これらの文は、スクリーニング、漏れのチェック、範囲の節を書くときにまた使います。
規模を見積もってから、複数の角度で検索する
10本の論文と1万本の論文では、進め方がまったく違います。だからまず、その分野がどれくらいの大きさかを見積もる価値があります。Google Scholar の「約 2,000,000 件」はほとんどがノイズで、AI アシスタントは実際の数にかかわらず10本ほどしか返してくれません。大まかなやり方としては、いくつかの言い方で検索してそれぞれの件数を記録し、各結果から数本ずつ眺めて、どれくらいが本当に関係があるかを確かめます。ある言い方で 300 件ヒットして半分が該当し、別の言い方では 5,000 件で20本に1本しか該当しないなら、分野の中心がどこにあるか、どの語が広すぎるかがわかります。
次に、もう少し厄介な事実に向き合うことになります。分野によって用語が揃っていないのです。コンピュータサイエンスでは looped transformers、recurrent-depth models、universal transformers が大きく重なっています。数学では同じ対象が、分野によって違う名前や記法で呼ばれることがあります。物理では一つの現象についての研究が hep-th、gr-qc、astro-ph に散らばっていることがよくあります。一つの名前で検索すれば、見つかるのは一つのコミュニティだけです。だから完璧な検索式を一本追い求めるより、狭めの検索をいくつも走らせるほうがよいのです。定着した名称、略語、表記ゆれにはキーワード検索を。考え方を平易な言葉で記述し、異なる用語を使う論文を拾うには意味検索を。そして中心的な論文をいくつか選んで参考文献をたどり、古い用語で書かれた初期の研究を取り戻します。結果を統合して重複を除き、各論文がどのルートで見つかったかを記録しておきます。関連する論文のまとまりが一つのルートからしか出てこなかったなら、ほかのルートにも同じ死角があるはずです。
flowchart LR
K1["キーワード:定着した名称"] --> U(("統合 +<br/>重複除去"))
K2["キーワード:略語・表記ゆれ"] --> U
S1["意味検索:平易な言葉で記述"] --> U
R["引用追跡:主要論文の参考文献"] --> U
U --> C["候補集合"]
C --> SC["スクリーニング"]統合した集合が、最終的に残す数よりずっと大きくても問題ありません。LLM エージェントの記憶についてのある検索では、6本のキーワード検索と5本の意味検索を統合した結果、候補は3万本を超え、その大半は後のスクリーニングで除かれました。スクリーニングが安ければ網を広げるコストは小さく、コミュニティを丸ごと見落とすコストは大きいのです。
スクリーニングしてから、漏れを確かめる
スクリーニングとは、最初のステップで書いた文を手に候補を一本ずつ判断していくことで、最初のパスではたいていタイトルと要旨で足ります。除外するときは「範囲外」「新しい結果なし」のような短いものでよいので理由を記録し、判断のつかない論文は無理に白黒をつけず、別の山にしておきます。そのうえで、多くの人が飛ばすことをします。レビューに入るべきだとすでにわかっている論文を書き出し、一本ずつ残っているか確かめるのです。残っていなければ、検索で漏れたのかスクリーニングで落ちたのかを突き止め、そのルートを直し、その修正で何が新たに入ってくるかを見ます。
flowchart LR
C["候補"] --> J{"基準と<br/>照らし合わせる"}
J -->|含める| I["採用"]
J -->|除外 + 理由| E["除外"]
J -->|判断保留| N["保留の山"]
N -->|さらに読む・<br/>基準を見直す| J
I --> G{"既知の論文は<br/>すべてある?"}
G -->|いいえ| F["漏れたルートを<br/>修正する"]
F --> C
G -->|はい| D["最終集合"]数千本の論文を手作業でスクリーニングすると何日もかかります。ここは AI モデルが本当に役立つところです。ただし、あなたの基準を適用し、すべての判断を後から検証できることが条件です。Parallax では Jev を使っており、各論文の各基準に対して較正された確率を出します(検索とスクリーニングのパイプラインの作り方は別の記事に書きました)。0.5 以上の論文を採用し、すべての確率を保存するので、確率順に並べて境界付近の論文を読むことができます。どのツールを使うにしても、採用された20本と除外された20本を読み、おかしいと感じたらまず基準を書き直してください。
文献の読み方:リストから地図へ
先にグループ分けし、それから読む
最終集合が手に入っても、上から順に読みたくなる気持ちを抑えて、まず論文をグループに分けます。グループ分けはリストを地図に変え、その地図はたいていレビューの骨格になります。コンピュータサイエンスや応用数学では手法やアプローチで、物理では研究対象の系や現象で分けることが多く、貢献の種類や時期で分けることもできます。一本の論文が二つのグループに属してもかまいません。大きくなりすぎたグループは分割が必要です。マルチモーダル研究のあるレビューでは「ベンチマークとデータセット」が100本を超え、さらに11のサブカテゴリに分けられました。100本の論文のグループはまだテーマではなく、ただの山だからです。また、大きな「その他」グループが残ったら無視しないでください。たいていはグループ分けの軸がまだ正しくないというサインです。
要約ではなく、比較のために読む
すべての論文を通読することはできませんし、そうしようとする必要もありません。各グループの中心的な論文、つまりほかの研究の土台になっているものと、最近の最も強力なものは通読する価値があります。残りは、それが何を付け加えたかを言える程度に読めば十分です。いちばん時間をかけるべきなのは互いに食い違う論文です。食い違いこそが、レビューで最も価値のある部分になることが多いからです。
読みながら書き留めるのは比較であるべきです。「A と B は同じ手法を使っているが、A は別の設定で評価して逆の結論に達している」はレビューの材料になります。「A は X を提案した。B は Y を提案した」は目次にすぎません。文献マトリクスが役立ちます。実際に論じる論文ごとに1行、比較したい観点ごとに1列です。すべてを網羅する必要はありませんが、書き始める前に比較を形にすることを強いてくれますし、後で多くの段落がほぼそのままこの表から書けます。
| 論文 | 問い | 手法・アプローチ | 設定・データ | 主な結果 | 限界 | グループ |
|---|---|---|---|---|---|---|
文献レビューを書く:材料から論旨へ
ここまでで、根拠を示せる論文の集合、グループ分け、比較表が手元にあります。多くの人はここで、グループごとに一節を立て、論文を順番に紹介していきます。それは間違いではありませんが、読み終えた読者は「で、結局?」と思います。良いレビューと、よく整理された文献リストを分けるのは論旨です。
ここからは実際のレビューを一つ、例として使い続けます。Parallax で作成した Looped and Recurrent-Depth Transformers で、同じ重みを深さ方向に繰り返し使うモデルを扱っています。358本の候補から作られ、そのうち102本を通読しています。全文は Parallax の Research セクションでほかのサーベイや月次の進展レポートとともに公開しているので、このガイドと並べて読むことができます。最良のレビューとは限りませんが、書き方の選択にはじっくり見る価値のあるものがいくつかあります。
論旨を見つける
レビューの論旨は「本稿は X 分野を概観する」ではありません。材料を読み込んだあとに、その分野について自分が下した少数の判断です。looped transformers のレビューは、序論で四つの主張を述べています。設計空間は小さく離散的で、ほぼすべてのアーキテクチャは四つの軸それぞれで一つずつ選択をしたものにすぎないこと。これらのモデルを実際に制約しているのは表現力ではなく学習の安定性であること。ループを支持する証拠の多くは、計算量をそろえた比較ではなくパラメータ数をそろえた比較から来ていること。そして推論時の適応的な深さは最も活発で、最も検証が足りない方向であり、報告されている効果は本物だが脆いことです。レビューの残りの部分は、この四つの主張の根拠になっています。
論旨はどこから来るのでしょうか。たいていは比較表からです。論文間でほとんど変わらない列は合意です。論文によって逆の結果が出る列は食い違いです。ほとんど空欄の列は空白かもしれません。looped transformers のレビューのアーキテクチャ比較表には「証拠の規模」という列があり、各論文が実際に報告している最大の設定を記録しています。著者は表の下に、それが主張の対象とする設定よりずっと小さいことが多いと注記しています。こうした列は、それ自体が一つの判断です。
最初から論旨がある必要はありません。現実的なのは、読み終えて表を埋めたあとで、その分野がいま実際にどういう状態にあるかを3〜5文で答えてみることです。答えられなければ、もっと読むか、もっと比較する必要があります。
文献レビューの構成:論旨を運ばせる
論旨ができれば、構成は決めやすくなります。テーマ別に、グループごとに一節を立てるのが最も一般的です。技術の系統がはっきりしている分野には手法別の構成が向いており、歴史が現状を説明する場合は時系列の構成がうまくいきます。ただ、どれを選ぶかよりも大事なのは、構成そのものに論旨を表現させることです。
looped transformers のレビューは、まず一つの形式的な定義を示し、次に四つの軸からなる分類を提案し、そのうえでアーキテクチャ、学習、推論、理論と章ごとに進みます。章のタイトルがそれ自体で判断になっています。学習の章のタイトルは「Training: stability is the binding constraint」(学習:安定性こそが制約である)です。目次だけを見た読者にも著者の立場がわかり、「3. 学習手法」よりはるかに多くを伝えます。
節の内部でも同じ考え方が使えます。そのグループの論文に共通することから始め、グループ内で比較し、未解決のことで締めくくる。この順序なら、最後の論文を紹介したところで唐突に終わることなく、どの節にも着地点ができます。
序論の書き方:範囲と証拠の限界を明示する
序論では、問いが何か、なぜいま重要か、レビューが何を主張するかを述べます。よく省かれるのが範囲です。期間、情報源、何を除いたか、どう検索したか。これを書くことで、読者はあなたの網羅性を信頼する理由を得て、結論がどの範囲で成り立つのかを知ることができます。
looped transformers のレビューには「Scope and evidence boundary」(範囲と証拠の境界)という節がまるごとあります。これはシステマティックレビューではなく一つのアーキテクチャ系統を扱う叙述的レビューであること、候補は6本の検索ルートから得た358本で、102本を通読し、残りはタイトルと要旨のレベルでスクリーニングしたことを述べ、読者が心に留めておくべき三つの注意点を挙げています。その中には、基礎となる論文のうち3本がライブラリになく外部から引用したこと、この分野はプレプリントが中心で、引用したものの多くが査読を経ていないことが含まれます。
これは予防線ではありません。境界がどこにあるかを知っている読者のほうが、その内側を信頼しやすいのです。
本文の段落:要約と統合の違いを例で見る
段落のレベルで最もよくある問題は、一つの論文に一段落を当て、各段落を著者名で始めることです。あるアーキテクチャの系統が標準的なモデルに勝るかどうかを論じる場面を想定して、説明用の対比を示します。
列挙型:[3] は再帰的アーキテクチャを提案し、複数のベンチマークでベースラインを上回った。[5] はこれに適応的な深さを加え、さらに結果を改善した。[8] は同様の構造を視覚タスクに拡張した。[6] はこれらのアーキテクチャを計算量をそろえた条件で再検証した。
統合型:このアーキテクチャの優位は複数の研究で報告されている [3][5][8] が、それらの比較はほぼすべてパラメータ数をそろえたものである。推論時の計算量をそろえると、結果は一貫しなくなる。言語タスクでは優位がほぼ消え、視覚タスクでは残る [6]。したがって「再帰的アーキテクチャのほうが優れている」という主張には、何と比べて、何をそろえたのかという問いに先に答える必要がある。
二つ目の段落は読むのに手間がかかりますが、読者に一つの判断を、その根拠と限界とともに渡しています。覚えておくと便利な順序は、主張を述べ、それを支える論文を引用し、それらがどこで違うのか、何を未解決のまま残しているのかを述べることです。
論文が食い違うときは、結論の前に理由を探す
レビューで最も価値があるのは、食い違いをどう扱うかであることが少なくありません。二つの論文群が逆の結論に達しているとき、「この点はまだ議論がある」とだけ書くのはやめましょう。違いの理由を探します。評価の設定が違うのか、データの規模が違うのか、比較のベースラインが違うのか、同じ用語の定義が違うのか。
looped transformers のレビューはまさにこの状況に直面しました。ループ型モデルが標準的なモデルに勝るかについて、文献の結論はばらばらでした。レビューはどちらかの側につくのではなく、これらの比較が実際には五つの異なる量をそろえていることを指摘しました。パラメータ数、学習の計算量、推論の計算量、デコードのコスト、実効的な深さです。パラメータ数をそろえればループは明らかに勝ちます。学習の計算量をそろえると結果はまちまちです。実効的な深さをそろえた場合のループの勝ちは、ほとんど自明です。レビューは五つのケースを一つの表にまとめ、こうした論文の読み方として、まず何をそろえたかを確認することを示しました。こう扱うことで、一見矛盾した結果の山が、説明力のある一つの結論になりました。
物理でも同じです。先に触れた高速電波バースト(FRB)の検索では、矛盾して見える二種類の証拠が出てきました。一つは母銀河の統計です。Bochenek らは位置が特定された FRB の母銀河を比較し、それらが重力崩壊型超新星で生まれたマグネターと整合すると結論しました(arXiv:
「起源はまだ議論がある」と書くだけのレビューは、読者に何も与えません。より有用なのは、二種類の証拠が別々の問いに答えていると指摘することです。母銀河の統計は典型的なバーストがどこから来るかを示し、球状星団の中の一つの天体は、少なくとももう一つの形成経路が存在することを示しています。両方が同時に正しくてもよく、それぞれの経路がどれだけ寄与しているかは、未解決問題の節に書ける具体的な問いになります。
空白には裏付けを、未解決問題は証拠から導く
「X を研究した例はない」は、レビューの中で最も間違えやすい一文であり、専門家の読者が最初に確かめるところです。書く前に、X をそれぞれの呼び名で直接検索し、判断を保留した論文の山を見直しましょう。検索に限界があったなら、「我々が調べた範囲の文献では」のように、それを文に含めます。
未解決問題も同じです。最後にひねり出すのではなく、すでに示した証拠から導かれるとき、最も説得力があります。looped transformers のレビューが最初に挙げる未解決問題は、計算量をそろえたベンチマークです。レビュー全体を通して繰り返される不満が、論文同士が両立しない条件で比較していることだからです。足りないのは比較の数ではなく、比較のための共通の手順です。読者がそこにたどり着くころには、それが必然に感じられます。証拠がすでに並べられているからです。
考察と結論の書き方
考察では、個々のグループから一歩引いて全体を見渡します。どの問題が複数の方向で繰り返し現れるか、ある領域では成熟した手法が別の領域ではまだ試されていないのはどこか。looped transformers のレビューは、未解決問題の前に「What the evidence actually supports」(証拠が実際に支持していること)という章を置き、まず論文間で数値を比較しにくい理由を説明し、最後に著者が確立したと考えることとそうでないことを述べる節で締めくくっています。結論でも、冒頭の四つの主張をそのまま繰り返してはいません。そのうち三つは「我々には十分に裏付けられていると思われる」と述べ、それぞれの根拠を示しています。結論がすべきことはまさにこれです。冒頭の問いに戻り、いま何を信じてよいか、何はまだ信じられないか、そしてどの程度の確信を持つべきかを読者に伝えることです。
関連研究の節の書き方
論文の関連研究の節は、より狭い役割を持つ短いレビューです。あなたの研究が必要であることを示すのが役割です。同じ方法を圧縮すれば十分に使えます。グループごとに一段落を書き、その研究の流れが何を達成したかを統合し、最後にあなたの論文がどう違うかを一文で述べます。よくある失敗は、引用の一覧にしてしまうことや、すべての段落を「本研究とは異なり」で締めながら、具体的に何が違うのかを言わないことです。
AI を使ったなら、どこで使ったかを書く
いまでは多くの学術誌や大学が、どの AI ツールをどの段階で使ったかの開示を求めており、たいていは手法の節か謝辞に書きます。AI は著者になれず、内容の責任は書いた人にあるというのが一般的な合意です。
レビューで最も開示しやすいのは検索とスクリーニングです。どの検索語を使ったか、候補は何本か、スクリーニングの基準は何か、AI の判断にどんな閾値を使ったか、何本を手で確かめたか。これらの情報はもともと範囲の節に書くべきものなので、AI の役割を書き添えても手間はほとんど増えません。本当のリスクは、判断や引用を AI に任せてしまうことです。判断はあなたが責任を持つべきもので、引用はすべて論文と照らし合わせる必要があります。Parallax ではすべてのスクリーニング基準と各論文の確率が保存されるので、この部分は記録を見ながらそのまま書けます。
提出前にもう一度確認する
最後の確認では、いくつかの点に注意してください。すべての主張が特定の論文を指しているか、その論文は本当にそう述べているか。入っているはずだとわかっていた論文は、実際に入っているか。直近数か月の研究をカバーしているか。動きの速い分野では、半年前で止まっているレビューはすでに多くを見落としています。空白についての主張はすべて直接の検索で裏付けられているか。プレプリントとその出版版が重複せずに引用されているか。そして執筆に AI ツールが関わったなら、AI が関わった主張をそれぞれ出典までたどれるか。
エージェントに任せる
ここまでの内容は特定のツールを必要としませんが、文献を探すこととグループ分けは、規模が大きくなると手作業では現実的でなくなります。Parallax はそのために作りました。アプリでは、一つのエージェントがこれらを一回の会話の中で進められます。コーパスを探って規模を見積もり検索語を選び、arXiv 全体に対して複数のキーワード検索と意味検索のルートを組んで集合演算で統合し、あなたの依頼から採用・除外の基準を書き、Jev にすべての候補をスクリーニングさせ、カテゴリを提案して論文を振り分けます。その後は、この集合についてエージェントと議論し、論文を比較し、証拠を引き出し、レビューのレポートを書かせることができます。先ほどの looped transformers のレビューは、このようにして作られました。
検索の全過程はノードグラフとして残ります。これはエージェントの記憶についての検索で、11本のキーワード検索と意味検索のルートが 36,564 本の候補に統合され、Jev によって 5,170 本まで絞り込まれています。
同じ流れはコンピュータサイエンス以外でも使えます。無料検索で物理の問いを試してみました。高速電波バーストの起源としてどんなモデルが提案され、どの観測がそれを支持または否定しているか、という問いです。5本のルートを走らせ、キーワード検索のルートはマグネターから中性子星合体、「blitzar」のようなモデル名まで、異なるコミュニティの用語をカバーしました。統合すると 479 本の候補になり、スクリーニング後に 265 本が残り、六つのトピックに分けられました。
「Other」グループに注目してください。89本、集合の約3分の1が、六つのトピックのどれにも当てはまりませんでした。これは先に述べた状況そのもので、書く前にこのグループから何本か読み、グループ分けの軸を調整することになります。
できないことも、はっきりさせておく価値があります。コーパスは arXiv のみで、2020年以降の arXiv の更新から構築されているため、それ以前の基礎的な研究は一部しかカバーしておらず、学術誌にしか載っていない論文は含まれません。それらは自分で参考文献をたどって補う必要があり、エージェントはまだ引用リンクを自動ではたどりません。さらに大事なのは、エージェントの草稿は出発点にすぎないということです。論旨を見つけること、論文がなぜ食い違うのかを解き明かすことは、依然としてあなたが下すべき判断です。
自分の問いで試してみたい場合、無料の文献検索はアカウントなしで使えます。最大5ルート、1,000本の候補をスクリーニングするクイックスキャンで、完全なレビューではありませんが、テーマの大きさとその内訳を知るには十分です。
よくある質問
文献レビューはどこから書き始めればよいですか?
序論からではありません。まず問いと採用基準を、確かめられる数文で書き、何回か手早く検索して分野の大きさを確かめます。そのテーマについて最近のサーベイがすでにいくつかあるなら、早めに読みましょう。その参考文献リストは文献に入る最短の道であり、どの問いがすでに十分論じられているかも教えてくれます。序論は、論旨がわかってから最後に書くほうが楽です。
文献レビューでは何本の論文を引用すべきですか?
決まった数はありません。関連研究の節なら数十本、サーベイなら数百本ということもあります。より良い問いは、自分が明示した範囲の中で分野をカバーできているかどうかです。候補集合と最終集合の大きさを報告すれば、読者が自分で判断できます。
ChatGPT などの AI アシスタントに書いてもらえますか?
検索語のブレインストーミング、構成づくり、推敲には問題ありませんが、検索の手段や情報源として使うときは注意が必要です。汎用アシスタントは少数の結果しか返さず、存在しない論文を引用することがあり、何を見落としたかも教えてくれません。引用はすべて論文そのものと照らし合わせて確かめてください。
プレプリントは含めるべきですか?
物理、数学、コンピュータサイエンスでは、含めるべきです。新しい研究の多くはまず arXiv に現れ、正式な出版より何年も早いこともあります。どれがプレプリントかを明記し、出版版がある場合はそちらを引用しましょう。
文献レビューにはどれくらい時間がかかりますか?
学位論文の章やサーベイなら、たいてい数週間から数か月かかります。以前は検索とスクリーニングがその大きな部分を占めていましたが、コーパス全体をスキャンして自動でスクリーニングするツールがあれば、それは午後のうちに収まり、読むことと書くことに時間を回せます。
おわりに
AI を文献検索に使い始めたころ、気になったのは AI が間違えることではなく、どれだけ見落としたのかがわからないことでした。GitHub にある awesome paper list の多さは、多くの人が同じものを求めていることを示しています。ある分野の研究を網羅し、整理した一覧です。ただ、Parallax を作るうちに、一覧はレビューの下限にすぎないことがますますはっきりしてきました。一覧を漏れなくすることは、いまや機械が手伝えます。そこから論旨を見いだし、結果がなぜ食い違うのかを説明することこそ、レビューを書く人が時間を使うべきところです。
Parallax は parallax.ink で公開中です。これからレビューに取りかかるなら、まず自分の問いで無料検索を試し、分野が本当はどれくらい大きいのかを見てから、浮いた時間を書くことに使ってください。